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健康に良い自然なワインを
「ナチュラルワイン」を飲もう

ワインは好きだけど農薬や添加物が気になる。そんな人には今、若者に大人気の、農薬・添加物フリーのナチュラルワインがお勧めです。
写真はイメージです

 「ナチュラルワイン」はあまり聞いたことがない。そんな人も多いかもしれませんが、今や、日本を含めて世界的に人気が上昇。特に、20代、30代を中心とする若い世代には「ワインはナチュラルワインしか飲まない」という人も大勢います。
 東京など大都市にはナチュラルワイン専門のバーやワインショップが続々とオープン。若者でにぎわっています。
 ナチュラルワインを日本語に直訳すれば「自然派ワイン」で、この表示はスーパーのワイン売り場でも最近よく見かけます。
 しかし、ここで言う「ナチュラルワイン」と、スーパーで見かける自然派ワインは似て非なるものです。
 自然派ワインとは何かと聞かれて、上手に答えられる人はおそらく誰もいません。売らんがためのマーケティング用語だからです。

昔ながらのワイン

 では、ナチュラルワインとはどんなワインなのでしょうか。
 一言で言うと、昔ながらのワインです。
 まず、ブドウの栽培は最低でも有機栽培。最低と言ったのは、より自然環境と調和したバイオダイナミック農法や再生型農業を実践している生産者も多いからです。
 ブドウを発酵させるには酵母が必要です。
昔の発酵は、ブドウの皮に付着した天然の酵母を利用した自然発酵でした。
 それが戦後、培養酵母が開発され普及したので、現代のワインの大半は、専門業者から購入した培養酵母を果汁に添加して、発酵させています。
 培養酵母を使うのは、発酵が所定の時間内にスムーズに進行するから。また、生産者が望むような香りを作り出すこともできます。
 例えば、ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは非常に華やかな香りで人気ですが、これは、ほとんどの生産者が同じ種類の培養酵母を使っているので、どのワインも似たような香りになるのです。
 これに対し、ナチュラルワインは天然酵母しか使いません。
 現代の醸造では、酵母の死骸やタンパク質の結晶など醸造過程で出た澱を短時間で効率的に取り除くため、さまざまな清澄剤を使います。化学的に合成されたものもありますが、卵白や魚の浮袋など自然由来のものもあります。ナチュラルワインは、そんな清澄剤も使いません。
 濾過もかけません。濾過は微生物の除去が目的です。ワインの微生物は必ずしも有害ではなく、むしろ長期熟成に欠かせない存在ですが、ボトルの中で思わぬ化学反応を起こして、ワインが濁ったり、味が変わったりすることもあるので、それを防ぐために行います。
 しかし、精密に濾過すると、おいしさの元となる成分まで除去してしまうので、ワインが薄っぺらな味わいになります。

亜硫酸塩無添加

 ナチュラルワインの最大の特徴は、亜硫酸塩を原則、添加しないことです。
 大抵のワインはボトルに「酸化防止剤(亜硫酸塩)含有」と書いてあります。
 国税庁の『酒類製造における亜硫酸の適正使用について』には、亜硫酸塩は「有毒であるから、取扱いに注意」と書いてあり、食品衛生法は亜硫酸塩の添加量をワイン1kgあたり0.35gまでとしています。
 亜硫酸塩には酸化防止機能も確かにありますが、一番の目的は菌の繁殖防止。つまり防腐剤、保存料として使用しているのです。
 ワインに添加される亜硫酸塩が、実際にどんな影響を人体に及ぼすかは、科学的には、はっきり解明されていません。
 しかし、コアなワイン愛好家やワインの専門家でナチュラルワイン好きの人に聞くと、10人中10人が「翌朝、体が軽い」と答えます。実は私もそう感じる一人です。
 イギリスのある研究論文には「亜硫酸塩にはアルコールが体内で分解され無毒化するのを妨げる効果がある」と書いてあります。
 なお、ワインを飲んだ後で起きる頭痛と、亜硫酸塩は無関係とされています。
 普通のワインは、亜硫酸塩を、収穫後のブドウにスプレーしたり、搾った果汁に混ぜたり、発酵を途中で止めるために添加したりと、醸造過程で何回も使います。
 ナチュラルワインは醸造過程では亜硫酸塩を使いません。生産者によっては、瓶詰めの時にごく少量添加する場合があります。

体が本能的に反応

スーパーやコンビニには、「亜硫酸無添加」と表ラベルに大きく書かれた1000円未満で買えるワインが売られています。
 確かに亜硫酸は使っていませんが、その代わり、最新鋭の濾過器で徹底的に濾過したり、加熱殺菌したり、味や見た目を調えるために表示義務のないいろいろな添加物を用いたりしています。
 つまり、ナチュラルワインと最も対極にある「工業的ワイン」なのです。
 一方、有機ワインと表示されているワインは、ブドウは有機栽培ですが、亜硫酸塩を普通に使いますし、添加物も濾過も、普通のワインと変わりないものがたくさんあります。
 特に安価な有機ワインに当てはまります。
 乾燥地域では、比較的簡単にブドウを有機栽培できるので、大手の生産者が大量に工業的な有機ワインを生産し、日本にも輸出しています。
 ナチュラルワインは1本3,000~5,000円くらいの価格帯が中心です。決っして安くはありませんが、食品と同じで、おいしくて本当に健康に良いものは高いのです。
 ナチュラルワインの味わいは一言で言うと、ジュースのような飲みやすさ。
 普通のワインの味わいとかなり違うので、「まずい」という人もいますが、多くの人は一度飲むとはまります。
 おそらく、体が本能的に喜んでいるのだと思います。